近年はライフスタイルの変化により、お墓を移す「改葬」を行い、管理や供養を任せられる永代供養墓を選ぶ方が増えています。ただし、具体的な手続きや進め方がわからず不安に感じる方も少なくありません。本記事では、改葬の基本的な意味から手順、費用の目安までをわかりやすく紹介します。
そもそも改葬とは
改葬とは、現在のお墓に納められている遺骨を別の場所へ移す、いわば「お墓の引っ越し」のことです。具体的には、既存のお墓から遺骨を取り出し、新たな墓地や永代供養墓、樹木葬などへ移動させる行為を意味します。この際、元のお墓はそのままにするのではなく、「墓じまい」を行って墓石を撤去し、更地にしたうえで管理者へ返還する必要があります。
改葬は法律に基づく手続き
また、改葬は法律に基づく正式な手続きであり、「墓地、埋葬等に関する法律」に従って進めなければなりません。遺骨を無断で取り出すことは認められておらず、必ず市町村長から「改葬許可証」を取得する必要があります。これに違反すると罰則が科される可能性があるため、正しい手順を踏むことが大切です。
改葬と墓じまいの違い
なお、改葬と墓じまいは混同されがちですが、意味は異なります。改葬はあくまで遺骨の移動を指し、墓じまいはこれまで使用していたお墓を撤去・整理する行為を指します。つまり、墓じまいは改葬の一連の手続きの中に含まれるものといえるでしょう。
近年改葬は増加傾向にある
近年では、少子高齢化やライフスタイルの変化を背景に、改葬の件数は増加傾向にあります。統計によると、1998年度には約7万件だった改葬が、2022年度には15万件を超え、過去最多となっています。このことからも、改葬は現代において一般的な選択肢の一つとなりつつあるといえるでしょう。
改葬をする理由
近年はライフスタイルや家族のあり方の変化により、改葬を選択する方が増えています。その背景には、いくつかの共通した理由があります。お墓が遠方にあり管理しにくい
まず挙げられるのが、お墓が遠方にあり管理しにくいという点です。都市部に住んでいる一方で、お墓が地方にある場合、頻繁にお墓参りへ行くことが難しくなります。移動にかかる時間や交通費などの負担も大きく、結果として管理が行き届かなくなるケースも少なくありません。自宅から近い場所へ改葬することで、気軽にお墓参りができ、管理の負担も軽減されます。
お墓の承継者がいない
次に、お墓の承継者がいない問題も大きな理由の一つです。承継者がいないままお墓を放置してしまうと、将来的に無縁仏となり、最終的には墓石が撤去され、遺骨が合祀墓へ移される可能性があります。そのため、あらかじめ永代供養墓や樹木葬などに改葬し、寺院に供養や管理を任せることで、承継者がいなくても安心できる環境を整える方が増えています。
子どもに負担をかけたくない
また、子どもに負担をかけたくないという思いから改葬を検討する方も多く見られます。従来のお墓は維持管理や費用面で負担がかかるため、将来子どもに手間や費用を背負わせたくないと考える人が増えています。永代供養のお墓であれば、寺院が供養や管理を行うため、子どもの負担を大幅に軽減可能です。さらに、年間管理費が不要なタイプを選ぶことで、経済的な負担も残さずに済みます。
宗旨や宗派の変化
さらに、宗旨や宗派の変化も改葬の理由となります。結婚などにより配偶者の宗派に合わせるケースや、自身の信仰や価値観の変化により別の宗派で供養を希望する場合などが挙げられます。改葬のメリット
改葬にはさまざまなメリットがあります。順番にその内容を見ていきましょう。お墓参りに行きやすくなる
まず大きな利点として挙げられるのが、お墓参りに行きやすくなる点です。核家族化の進行や都市部への人口集中により、先祖代々のお墓が地方にある場合、移動の負担が大きく、なかなか足を運べないというケースが増えています。改葬によって自宅からアクセスしやすい場所へお墓を移すことで、気軽にお墓参りができるようになり、故人とのつながりをより身近に感じられるようになります。
お墓の承継者問題を解決できる
また、お墓の承継者問題を解決できる点も重要なメリットです。少子化や家族構成の変化により、お墓を引き継ぐ人がいないという悩みを抱える方は少なくありません。承継者がいないままでは、将来的にお墓が無縁墓となる可能性がありますが、改葬して永代供養墓など承継者を必要としないお墓へ移すことで、その心配を解消できます。寺院や霊園が供養や管理を行ってくれるため、安心して任せることができます。
費用の負担を軽減できる
さらに、費用面での負担軽減も見逃せないポイントです。従来のお墓は、墓地の使用料や年間管理費など、継続的に費用が発生します。しかし、改葬を機に永代供養付きのお墓や管理費が不要なタイプを選べば、長期的な支出を抑えることが可能です。特に、将来的に子どもや家族へ経済的な負担を残したくないと考える方にとっては、大きなメリットといえるでしょう。
改葬のデメリット
改葬には多くのメリットがある一方で、いくつか注意すべきデメリットも存在します。改装費用が発生する
まず挙げられるのが、改葬に伴う費用の負担です。既存のお墓から遺骨を取り出し、新たな供養先へ移すためには、墓石の撤去費用や運搬費、新しい納骨先の費用など、一定の出費が発生します。こうした費用を抑えたい場合には、新たにお墓を建てるのではなく、永代供養墓など比較的費用負担の少ない供養方法を検討するのも一つの方法です。
人間関係のトラブルにつながる可能性がある
また、改葬は人間関係のトラブルにつながる可能性がある点にも注意が必要です。特に、お寺にあるお墓を移す場合は、檀家を離れることになるため、事前に住職へ改葬の理由を丁寧に説明することが重要です。十分な説明や配慮がないまま進めてしまうと、感情的な行き違いが生じ、高額な離檀料を請求されるケースもあります。そのため、誠実なコミュニケーションを心がけることが大切です。さらに、親族間での意見の不一致もトラブルの原因となりやすいポイントです。
改葬は家族や先祖に関わる大切な問題であるため、十分な話し合いが行われていないと、後々対立が生じることがあります。特に遠方に住んでいる親族がいる場合でも、事前にしっかりと連絡を取り、改葬の理由や目的を丁寧に説明し、納得してもらうことが重要です。
改葬の具体的な手順
改葬を行う際には、いくつかの手順を順番に進めていく必要があります。親族・寺院への相談
まず最初に大切なのが、親族や寺院への相談です。改葬は利便性の向上など多くのメリットがありますが、先祖代々のお墓に関わる問題であるため、親族の理解を得ずに進めるとトラブルに発展する可能性があります。また、寺院墓地にお墓がある場合は、檀家関係の解消にも関わるため、住職へ丁寧に事情を説明し、了承を得ることが重要です。
改葬先の決定
次に、改葬先となる墓地や霊園を決定します。法律上、移葬先が決まっていなければ改葬の許可は下りないため、事前に受け入れ可能な施設を探し、決定後に「受入証明書」を発行してもらいます。改葬許可申請書の入手
その後、現在お墓がある市区町村の役所で「改葬許可申請書」を入手します。自治体によっては発行に手数料がかかる場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。埋葬証明書の発行
続いて、現在のお墓の管理者に改葬の意思を正式に伝え「埋葬証明書」を発行してもらいます。この際には、これまで供養を行ってくれていたことへの感謝をしっかりと伝えることが大切です。改葬許可証の発行
「改葬許可申請書」「受入証明書」「埋葬証明書」の3点が揃ったら、これらを役所に提出し「改葬許可証」を発行してもらいます。この許可証は遺骨の移動後に新しい墓地へ提出する重要な書類であるため、紛失しないよう大切に保管しましょう。改葬作業
許可証が発行された後は、実際に遺骨を取り出す作業に移ります。お墓の撤去にあたっては、僧侶を招いて「魂抜き」や「閉眼供養」と呼ばれる儀式を行い、墓石に宿る魂を抜く供養を実施します。その後、墓石を撤去し、更地にして墓地を返還する流れです。新しい改葬先への納骨
最後に、新しい改葬先のお墓へ納骨を行います。納骨の際には、宗派や施設のルールに従い「開眼供養」と呼ばれる魂を入れる儀式を行うのが一般的です。もし新しいお墓がまだ完成していない場合は、一時的に自宅などで遺骨を安置することもあります。改葬費用の相場
改葬にかかる費用は、大きく「現在のお墓を処分する費用」と「新しい納骨先にかかる費用」の2つに分けられます。現在のお墓を処分する費用
まず、現在のお墓を処分する際には、墓石の撤去・処分費用が必要で、一般的には1平方メートルあたり約10万円が目安とされています。加えて、墓石に宿る魂を抜く「閉眼供養」のお布施として約1万円〜5万円、遺骨を取り出す出骨作業として1柱あたり約4万円〜5万円程度がかかります。
また、寺院墓地の場合は檀家を離れる際に離檀料が発生することがあり、相場は約3万円〜20万円ほどです。
新しい納骨先にかかる費用
一方、新しい納骨先にかかる費用としては、改葬許可証の発行手数料が数百円〜数千円、納骨費用が遺骨1柱につき約4万円程度必要になります。既存の墓石を移設する場合には、運搬費として0〜10万円ほどがかかることもあります。さらに、新しいお墓に魂を入れる「開眼供養」のお布施として約1万円〜5万円が必要です。新たにお墓を建てる場合は約170万円前後が目安であり、永代供養墓を選ぶ場合は約10万円〜150万円程度と、選択肢によって費用に幅があります。
改葬に伴うお布施の相場
また、改葬に伴うお布施についても理解しておくことが大切です。「閉眼供養」と「開眼供養」の際には僧侶に読経を依頼するため、それぞれ3万円〜5万円程度のお布施を用意するのが一般的とされています。加えて、僧侶の交通費としての御車料や、会食に参加しない場合の御膳料としてそれぞれ1万円程度を包むケースもあります。